『悪童日記』を観た。(ネタバレあり)
監督・脚本:ヤーノシュ・サース
出演:アンドラーシュ・ジューアント
ラースロー・ジューアント
第二次世界大戦下で双子が生き残る為に
なんでもするっていう話です。
原作未読で
TOHOシネマズシャンテにて鑑賞。
!!!ネタバレしています!!!
この世界に、負けたくない。
好きになりやすいタイプの映画があって、
自分の感情を表に引っ張りだしてくれる映画と
自分の自意識と戦わなくてはいけなくなる映画なんですけど、
この映画はどちらでもなかったのですが、
とても好みでした。
基本的に匿名的な作品で(原作もそうみたいですね)
人の名前や土地の名前があまり出てきません。
でも、どこにでもある話って訳じゃ全然なくて、
ファンタジーというか寓話っぽさが強いです。
「この子たちを分かってあげられるのは私だけ!」
みたいな気分とでもいうのでしょうか、
そんな風に思う人も、もしかしたらいるかもしれません。
双子がこの映画でしていたことを
挙げてみます。
①日記を書く
②勉強をする
この2つは父親と母親、
それぞれから毎日するようにと言われていたことです。
これが彼らの土台になります。
③観察
とにかく観察といいますか、
覗き見をしていた印象があります。
自分たちにとっての死活問題を父親が母親に言っていたことを
たまたま聞いてしまったことに起因しているんでしょうか。
子供だからといって「見せてもらえないこと」があると
分かってしまったのかもしれません。
④訓練
劇中、印象に最も残っている言葉でした。
彼らは「負けたくない」といい、
寒さや空腹、あらゆる痛みに対しての訓練をします。
⑤判断
双子は二人で一心同体なので、
価値基準が共有しなくても、同じです。
その価値基準はある意味とても明確で
ある意味とても難義でした。
私が感じたのは
・彼らに優しくすれば正しい
・彼らの誠意を裏切るようなことをすれば悪
・認めてくれれば、何かを共有することも辞さない
そこに世間一般の倫理観などは入る余地がありません。
双子は二人で一心同体ですが、一人ではなく二人なので、
二人いれば、一人よりもその世界は強固なものになりうると
考えるとするならば、
彼らの価値基準は普通の人よりも揺るがないのかもしれません。
そういう風に感じました。
***
ラストには文字通りに父親殺しをし、
文字通りに屍を超えて行きます。
彼らに一番弱点を強いようとした父を
殺し、乗り越えることで、
彼らの一番の弱点の訓練が始まります。
そこでこの映画は終わります。
「自分らの正義」を貫き、彼らは別れを決めるのですが、
大人の世界で言われる”情”といったものが一切ない
残酷だけれどもあまりにも強かに純粋に
”成長”を求めている彼らに、
何故かよく分からない、言葉にならない
感動っぽいものをしてしまいました。
これは何なんだろう。
何かこういう
「子供の頃の何か言葉にならないし
もうほとんど忘れてしまった感覚」を
じんわり肌に残してくれるような映画は
とても好きです。
原作、読もう。
何となく似たような映画としては
『少年は残酷な弓を射る』かな、と思いました。
サスペンスとかホラーとか入ってますけど、
エズラ君とティルダ・スウィントンが美しいです。